消費税増税が経済の足を引っ張った
消費税は、2014年4月に5%から8%へ、2019年10月に8%から10%へと引き上げられた。この2回の増税は、民主・自民・公明の3党合意の下に行われたものだから、民主政治である以上、国民の意思だ。
しかし、日本経済の足を完全に引っ張った。 消費税は、1989年、バブル最後の年に新設され、税率3%で導入された。その結果、この年と翌年の1990年の税収は上がったが、翌々年から経済は失速した。これは、バブル崩壊に加えて消費税の導入によって消費が低迷したからだ。
以後、日本は長期不況に陥った。 1997年、消費税は3%から5%に引き上げられた。このときも、その年の税収は上がったが、翌1998年にすぐに失速している。 これは、じつに簡単なパターン認識である。「消費税を上げると1~2年は税収が上がるが、その後は下がる」ということだ。それなのに、当時の安倍政権は〝地雷を踏む〟ことを選んでしまった。
欧州諸国の付加価値税(VAT)は高率で、当時もっとも高いハンガリーが27%、次いでアイスランドが25.5%、クロアチア、スウェーデン、デンマーク、ノルウェーが同率で25%となっている。
さらに、フランス19.6%、ドイツ19%、英国17.5%だから、日本の8%に比べたら高いのは間違いなかった。 しかし、欧州諸国は食料品など生活必需品には軽減税率を導入して税率を低く抑えていた。
たとえば英国では食料品、 医薬品などの税率はゼロであり、フランスも医薬品は税率2.1%でしかない。 アイルランド、オーストラリアなども食料品の税率はゼロだった。
岸田政権になってから、「防衛費倍増」「子ども予算倍増」など、「倍増」のオンパレードになった。どれも、緊縮を行わないなら、国債発行か増税するほか手がない。
すでに、防衛費倍増問題では、復興特別所得税の延長や、所得税、たばこ税、法人税などで1兆円を増税する方針が決められた。
これは、2024年度から段階的に実施される。 それとともに、〝隠れ増税〟も進んでいる。健康保険料と介護保険料の引き上げ、年金加入期間の延長と支給年齢の引き上げなどだ。
国民健康保険料は2022年4月に上限額が3万円引き上げられたばかりだが、2023年4月からさらに2万円引き上げられた。年金のほうは、2024年に控えた5年に1度の年金財政検証に合わせて、数々の増額メニューが検討されている。
中国の諺(ことわざ)に、「苛政(かせい)は虎(とら)よりも猛(もう)なり」というのがある。これは、重税を課す過酷な政治は人を食う虎よりも恐ろしいということだ。
山田 順 ジャーナリスト・作家
※本記事は『日本経済の壁』(エムディエヌコーポレーション)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。